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良性発作性頭位めまい症
良性発作性頭位めまい症はめまいを訴える疾患の中で最もよくみられる疾患です。よく、めまいというとすぐメニエール病を想い出すひとが多いと思います。しかしめまい症の約20%〜40%はこの良性発作性めまい症なのです。
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症状:
この疾患の特徴は病名で示されているように頭位(頭の位置)の変化によってめまい発作が誘発されることにあります。 |
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1: |
耳鳴、難聴はありません。メニエール病との鑑別になります。 |
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2: |
中枢性めまいに特徴的な神経症状もありません。 |
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3: |
めまいは通常10〜20秒でおさまります。長くても1分位でおさまります。 |
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4: |
めまいは多くは回転感を伴います。 |
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診断基準(日本平衡神経科学会による病歴からの診断) |
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1: |
特定の頭位をとると回転性ないしは動揺性のめまいが起こる |
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2: |
めまいはめまい頭位において次第に増強し、次いで減弱ないし消失する |
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3: |
続けて同じ頭位をとるとめまいは軽くなる |
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4: |
蝸牛症状(耳鳴、難聴)や身体のふらつきは自覚しない |
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1:、2:、3: が存在するときは良性発作性頭位めまい症疑い例と診断する |
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めまい検査から良性発作性めまいの診断基準 |
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1: |
めまい頭位で回旋性眼振が数秒間の潜伏時間おいて出現して次第に眼振が強くなり、続いて眼振は減弱し、消失する |
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2: |
眼振の出現と共にめまいを訴える |
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3: |
めまい頭位を繰り返えすと眼振、めまいは減弱する |
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4: |
めまい頭位より坐位、または仰臥位に戻すと反対方向に向かう回旋性眼振が出現する |
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5: |
聴力検査、温度刺激検査では異常認めないことが多い |
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6: |
中枢性神経症状は認めない |
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上記1:、2:、3: をみるときは良性発作性めまいと診断する |
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良性発作性頭位めまい症の病因
病態には内耳の半規管障害説、耳石障害説があります |
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1: |
クプラ結石症:耳石がクプラに付着するとその重力でクプラを偏位させその結果、感覚細胞の興奮性を変化させてめまいが起こるという説 |
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2: |
半規管結石症:遊離した耳石が半規管内を頭位変化によって重力に従って移動し、内リンパ流動とクプラの偏位を起こすことによってめまいが起こるという説。
現在は少なくとも半規管結石症が良性発作性頭位めまい症の主たる原因であろうと考えられています。 |
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良性発作性めまい症の発症・誘因について |
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1: |
起床時、夜間に目をさましたとき、美容室、理髪店で臥位から坐位へ起きあがって時 |
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2: |
頭部外傷後、中耳炎手術の既往、突発性難聴・メニエール病の経過中やその罹患後 |
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3: |
患者数のピークは50歳から60歳にあり比較的高年齢層に多いことより加齢も発症因子の1つと考えられる |
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良性発作性頭位めまい症の経過について
日常診療の中でめまいを訴える疾患としては良性発作性めまい症は最も頻度が多い疾患です。しかし幸いなことはこの疾患は自然に治癒していくことが多いのです。
例えば昨日、起床時に回転性めまいがあり、起きようとするとめまいが起きたので1日寝ていたが今朝は少しめまいがするだけなので受診した。そこで患者さんのめまいを起こしたという頭位にしますと眼振をみます。このように発症から1週間もすると多くの患者さんはふらつきは残りますがめまいは改善します。中には2週間位症状が出る方もいますが積極的にめまい頭位をとったり、頭を動かす運動を続けることで次第によくなっていきます。しかし4週以上もめまい、ふらふら感が持続する患者さんも少数ですがみられますが本当に良性発作性頭位めまい症であるのか経過観察を行い、他の疾患との鑑別診断の必要性がある時には画像検査等追加の検査を行います。
過去に良性発作性めまい症に罹患したことがある患者さんが再発することも比較的多くみられます。再発するまでの間隔はそのひとによってそれぞれです。 |
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良性発作性めまい症の治療 |
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1: |
薬物療法:急性期には安静と通常のめまい治療に用いられる抗めまい剤、循環改善剤、抗不安剤、鎮静剤、制吐剤等を投与します。 |
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2: |
理学療法:安静時めまいの消失後の頭位変化による誘発めまいには平衡訓練がすすめられます。平衡訓練は頭位変化、体位変化などの運動を反復してめまいを積極的に起こさせてめまいに慣れさせてできるだけ早く治癒させる方法です。
良性発作性めまい症が後半規管の半規管結石症が多いと考えられているのでこの病態対して行われる治療法で頭部を種々の頭位を連続的にとることで後半規管に浮遊する微細な耳石を元の場所である卵形嚢に戻す理学療法を連日行って治癒させる方法です。この頭部運動にはにいくつかの方法が報告されており医療機関で行われます。この訓練で2日以上連続してめまいが誘発されなければ治癒と判定致します。 |
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良性発作性頭位めまい症の予後と再発
予後は良好で早期離床、積極的な理学、運動療法の実施により頭位性めまい、眼振は早期に消失して通常は数日以内から2,3カ月で治癒します。
本疾患には30%〜50%に再発があるといわれています。 |
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鑑別すべき疾患
頭位を変換する或いは体位の変化によって誘発されるめまいは良性発作性頭位めまい症のみではなく他の疾患においてもみられることがあります。
そのような鑑別すべき疾患もありますのでそれらの疾患を列記します。 |
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1: |
外リンパ瘻(内耳窓破裂症):中耳圧、内耳圧の急激な変化によって内耳窓が破裂してて外リンパが中耳腔に流出して発症する。その側の急性感音難聴と共に頭位性めまいを生じます。 |
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2: |
頚性めまい:頚部の捻転時に頚椎が椎骨動脈を圧迫して椎骨脳動脈系の循環障害を起こす。このように頚部を回転した時にのみめまいが生じるが良性発作性頭位めまい症は体位を変化した時にもめまいを生じます。 |
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3: |
小脳障害:頭位を変換すると内耳の耳石器、半規管が刺激されるが小脳の抑制機能により健常者はめまいは生じません。しかし、小脳障害があればこの抑制機能がなくなり頭位めまいが生じます。 |
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4: |
循環障害によるめまい:高齢者のめまいの原因として最も多くみられます。高齢者では高血圧、自律神経機能低下もあってこのため頭位、体位の変換時に血圧変動、脳虚血を起こしてめまいが生じます。 |
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良性発作性頭位めまい症のまとめ |
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1: |
原因:内耳の耳石器の機能異常といわれています |
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2: |
症状:頭の特定の位置、例えば上を向いたり、下を見たり、右下、左下に傾けたり、寝返りした時にだけ短時間の回転性めまいが起きます。頭を動かさないでじっとしていますとめまいは起きません。めまいを起こす頭位・体位を繰り返して行いますとめまいは次第に起きなくなります。 |
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3: |
随伴症状:嘔気を伴うことがあります。難聴、耳鳴はともなうことはありません。メニエール病と違うところです。
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