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特集

めまいのお話
 
  8.末梢性めまいをきたす耳科的疾患について
   
  4)耳鼻科でみられる主なめまい疾患について


(1) メニエール病
 メニエール病の名称は1861年、Prosper Meniereが当時めまいは中枢障害(脳の病気)によると考えられていましたがメニエールは難聴を伴っためまいの発作後、他病死した少女の病理所見で内耳に出血があるのをみて内耳障害でめまいが発症することを発表しました。この講演を聞いたPolitzerは1902年、めまい、難聴、耳鳴の三主徴を有する症例をメニエール病と呼ぶことを提唱しました。このようにメニエール病が内耳の障害、即ち耳に関係していることから耳鼻科医がめまいに係わるようになったのです。
1 メニエール病の診断基準
〔厚生省前庭機能異常調査研究班による〕
1: 回転性めまい発作を反復すること
めまいは一般に特別な誘因なく発来し、嘔気、嘔吐を伴い、数分ないし数時間持続する発作のなかには、「回転性」めまいでない場合もある。
発作中は水平、回旋混合の自発眼振をみることが多い反復性の確認されない初回発作では、めまいを伴う突発性難聴と十分鑑別されなければならない
2: 耳鳴、難聴などの蝸牛症状が反復・消長すること
耳鳴り、難聴の両方またはいずれかの変動に伴いめまいをきたすことが多い
耳閉塞感や強い音に対する過敏性を訴える例も多い
聴力検査では、著明な中・低音部域値変動や音の大きさの補充現象を呈することが多い
一耳罹患を原則とするが両耳の場合もみられる
3: 1:2:.の症状をきたす中枢神経疾患、ならびに原因既知のめまい、難聴を主訴とする疾患が除外できる
これらの疾患を除外するためには、問診、一般神経学的検査、平衡機能検査、聴力検査などを含む専門的な臨床検査を行い、時には経過観察が必要な場合もある。
診断の基準
I 確実例 1: 2: 3:の全条件を満たすもの
II 疑い例 1:と3:または2:と3:の条件を満たすもの
(注)1、2の症候の原疾患として、十分に中耳炎、中毒性内耳障害、梅毒などの原因既知の疾患を除外できなかったときは、これらの疾患名を併記することとする。

上記に示しましたように医師がメニエール病と診断するにはこのような厳しい診断基準があり、容易にメニエール病の診断はできないのです。患者さんの中にはこれまでメニエール病といわれて長い間、治療を続けてこられた方には他の医師にあなたはメニエール病でないと言われますと不満、不信を感じる方もおられますが今一度上記に示した診断基準をお読みになって頂き、自分のめまいの原因について精査を受け、より確実な診断の下でより良き治療を受けて頂きたく思います。
2 メニエール病の病因
メニエールが診た少女の内耳の病的所見は内耳の出血でしたが現在はメニエール病の病態は内耳の内リンパ水腫であることが明らかになりました。この内リンパ水腫は内リンパ管の圧が高くなり膜迷路が拡張した状態と内リンパ圧が低下して内リンパ管が虚脱した状態になることもみられます。

・ 内リンパ水腫の発症の原因:内耳の内リンパ嚢で内リンパの吸収障害によって起こるとされ、この吸収障害は、1)血管障害、2)免疫異常 3)内リンパ嚢のヘルペスウイルスT型の不顕性感染 4)内リンパ嚢の形成不全 等が考えられていますが確定されてはいません。
3 メニエール病の疫学
発症年齢: 男性 40代、女性 30代にピークがあるが最近は高齢化の傾向もみられます
性別: 女性に多い傾向がみられます
職業: 専門・技術職に多い
性格: 几帳面、神経質な性格な方に多い
合併症: 低血圧の方に多い
発症因子: 精神的、肉体的疲労、睡眠不足、ストレス等が誘因となります
4 メニエール病の症状・経過について
<一般的症状>
1: めまいの持続時間:数分〜数時間
2: めまいと蝸牛症状(難聴、耳鳴)の関係:多数がめまい発作前に蝸牛症状が先行する例が多く、次いでめまいと蝸牛症状が同時に出現する。
めまい発作が先に来て蝸牛症状がその後に来る例は少ない。
3: 随伴症状:難聴、耳鳴、耳閉塞感、自声強聴、聴覚過敏などをめまいとともに訴える例が多い
4: 自律神経症状:めまい発作時に嘔気、嘔吐を伴う例が多い
5: めまいと難聴、耳鳴等の蝸牛症状がメニエール病の三大症状で決して強い頭痛、意識障害、複視、知覚・運動障害などの中枢神経症状を伴うことはありません。これらの症状は中枢性めまいを示す重大な症状であり、できるだけ早く脳神経外科を受診して下さい。
6: めまいの経過:一般的にはめまいはは数分から数時間持続し、その後は頭位・頭位変換(頭を左右、上下に動かす)するとめまいが数日間持続しながら次第に軽くなり、消失します。耳鳴、難聴の蝸牛症状も徐々によくなり間歇期に入りますが、この間歇期にも難聴、耳鳴、軽いめまい感、肩こりなど持続する例もみられる。このように毎月のようにめまい発作起こす例、数か月、数年に1度のめまいを繰り返す例、長期間無症状であった後再燃する例などがあり症例によりめまいの経過は多様です。メニエール病が長期化すると難聴は最終的には高度難聴に至る例もみられます。


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