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<メニエール病の聴力変動について> |
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1: |
メニエール病の特徴は聴力が変動することです。典型的な聴力変動はめまい発作とともに変動します。聴力は主に低音・中音域(250Hz〜1000Hz)で変動し、低音障害型聴力障害といいます。めまい発作がおさまって間欠期に入りますと低音障害は改善して高音部(4000Hz〜8000Hz)障害が残り、また耳鳴も残ります。聴力障害、耳鳴の他に耳閉塞感、ちょっとした小さな音に敏感になる音響過敏症や音が割れて聞える複聴などの症状も経過中に変動してみられます。 |
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2: |
メニエール病の予後(長期観察)
めまい発作の程度、頻度は通常年齢を重ねるにつれて軽くなっていきます。聴力障害は次第に増悪して最終的には中程度〜高度難聴に至ります。
聴力は初期には低音が聞こえにくくなる低音障害型を示しますが晩期には全ての周波数が障害される水平型に移行していきます。
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<メニエール病の診断>
メニエール病は1)回転性めまい発作を反復する 2)難聴、耳鳴などの蝸牛症状が反復、消長すること 3)以上の症状を来す中枢神経疾患、ならびに原因既知のめまい、難聴を主訴とする疾患が除外できる。これらが明確に確認できる臨床症状を呈していればメニエール病と診断されます。
しかしこれらの臨床症状の他に種々の検査を実施することで診断は確立されます。次ぎにメニエール病診断確立のための諸検査を示します。
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1: |
聴力検査
メニエール病の聴力障害はめまい発作、あるいはめまいと必ずしも連動しないで変動します。聴力検査を繰り返して実施することで聴力変動があるかどうかを確認します。 |
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2: |
内リンパ水腫の存在の確認
メニエール病の病態は内リンパ水腫であることは先に説明致しましたがこの内リンパ水腫が在ることを調べる検査があります。詳細な検査内容は省略しますが下記の薬剤を静脈注射、或いは内服して前庭機能及び聴力障害の改善の有無により内リンパ水腫の存在を推測する検査です。
a) フロセミドテスト
b) グリセロールテスト |
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3: |
蝸電図検査:音刺激によって蝸牛に生ずる3種類の電位を測定してこの電位のうち―SPという電位の異常増大現象はメニエール病の診断に有用です |
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4: |
画像検査:メニエール病の診断は現病歴の聴取と聴力検査、平衡機能検査より診断してきましたが近年、CT検査, MRI検査などの画像検査の著しい発達によりメニエール病と同様な症候を示す聴神経腫瘍、前庭水管拡大症などが鑑別されるようになっています。 |
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メニエール病の治療
メニエール病の治療は時代の変遷と共に推移して来ましたが現在実施されている治療法を挙げてみます。 |
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1: |
メニエール病の薬物治療 |
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(a) |
内耳血流改善剤、循環改善剤:
メニエール病を含めその他のめまい疾患の基盤に内耳の循環障害が存在すると推定されています。この障害の改善するために脳の局所血流増加、脳血管拡張を目的とする薬剤です。
ATP剤、プロスタグランジン製剤、イブディラスト、イソプロテレノール |
(b) |
浸透圧利尿剤(内リンパ水腫改善剤):
メニエール病の病態は内リンパ水腫であるのでこの内リンパ水腫を軽減する薬剤です。
イソソルビド、グリセオール、アセタゾラマイド、尿素剤などがあります。2005年7月からメニレットゼリーという新たな薬剤が出ました。 |
(c) |
アミノグリコシド
アミノグリコシド剤(ゲンタシン)を中耳鼓室内に直接注入して前庭機能の廃絶させることでめまい発作を納める方法です。 |
(d) |
ステロイド剤
ステロイド剤の内服、点滴注射、鼓室内投与 |
(e) |
抗めまい剤:
ベータヒスチン、ジフェニドール |
(f) |
抗ヒスタミン剤:
ヂフェニールドラミン |
(g) |
抗不安剤:
メニエール病発作の背景に精神的、肉体的ストレスがありますので鎮静剤を投与します。 |
(h) |
7%炭酸水素ナトリウム(メイロン)の点滴、静脈注射
メニエール病の発作期、間欠期の症状に対して以上の薬剤を種々組み合わせて投与します。 |
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2: |
メニエール病の外科的治療
保存的な薬物治療を行ってもめまい発作が何度も起きて日常生活や職務に支障を来す例や再三のめまい発作によって精神的苦痛、不安が強い例には外科的治療が選択されます。外科的治療が適応とする際に重要なことはメニエール病を発症している内耳が同定されることです。メニエール病には両側の内耳障害によるいわゆる両側メニエール病があり、またメニエール病の患者さんの中に他側の耳にも難聴を有する例も多くみられますのでメニエール病の外科的手術により聴力を失うことがありますので他側の聴力がどの程度かということが大変重要な問題になりますので手術治療を選択する方は主治医と十分に話し合うことが大切であると思います。 |
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(a) |
内リンパ嚢開放術:1927年、G.Portmannにより始まりその後、多くの変法が報告されています。この手術は内リンパ嚢を切開して内リンパを漏出させてメニエール病の病態である内リンパ水腫を改善させることを目的として行われます。しかしこの術後の長期観察によって再発する例も多いことよりこの手術そのものに批判が多いことも事実です。そこで最近は内リンパ嚢開放と共に高濃度ステロイド挿入術やマイトマイシンCという薬剤を含んだスポンゼルを内リンパ嚢の中に留置後洗浄する方法等で従来の単純な開放術の成績より良い結果を得ている報告もあります。 |
(b) |
前庭神経切断術:前庭神経を切断してめまい発作を予防する目的で行われます。
めまいの制御はほぼ90%以上で、聴力も保存されます。 |
(c) |
迷路破壊術:迷路機能を廃絶させる手術法でめまい発作から解放されますが聴力は失うことになります。 |
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メニエール病の予防
メニエール病はめまい発作を繰り返しますので日常生活に大きな支障をきたし聴力障害も次第に増悪していきます。また恒常的な耳鳴も患者さんにとっては悩み多き症状です。めまい発作、難聴の進行を止める治療方法は現在ありません。しかしメニエール病の症状の悪化にストレスが大きく関与していることはよく知られていますのでストレスを種々な手段でコントロールすることがメニエール病の予防に有効です。また多くの患者さんはめまい発作が来る2〜4日前に耳鳴、耳閉塞感があり、音が響いて聞こえたり、割れて聞こえることがありますのでこれらの症状が出たら早めに治療を始めることをお勧めします。 |
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メニエール病のまとめ |
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1: |
原因:内リンパ水腫(内耳に水がたまる)といわれています。 |
2: |
症状:回転性めまい発作を反復しておきる |
3: |
めまいに随伴して難聴、耳鳴を訴えます。 |
4: |
吐き気・嘔吐、冷や汗、血圧変動などの自律神経症状などもおきます |
5: |
めまい発作がおさまれば聴力障害はもとに戻りますがめまい発作を繰り返していますと次第に難聴は増悪していきます |
6: |
治療:
a) |
血液のめぐりをよくする薬剤(循環改善薬) |
b) |
傷んだ細胞を賦活(元気にすること)する薬剤(代謝賦活薬) |
c) |
不安を取り除く薬剤(抗不安薬) |
d) |
内耳の水腫・むくみをとる薬剤(利尿薬) |
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7: |
発作時の生活指導:
a) |
からだを動かさないでめまいを起こさない姿勢で休む |
b) |
衣服はゆるやかにして横になる |
c) |
静かな部屋で安静にする |
d) |
動くもの、例えばテレビジョンを見ない |
e) |
新聞、雑誌などものをみつめることをしない
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