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(1) |
椎骨動脈系の血管走行と潅流領域 |
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椎骨動脈は左右とも鎖骨下動脈から分岐して第6〜第1頚椎の横突起の中(横突孔)を貫通して、第1頚椎(環椎)と後頭骨の間から大後頭孔を通って頭蓋内に入ります。延髄の外側面から前方に回り、延髄―橋境界部で左右の椎骨動脈が合流しますが、この合流直前で後下小脳動脈を出して延髄外側、小脳の下内側面―下外側面を潅流します。合流後は脳底動脈と名前を変えて橋腹側正中部を上行して前下小脳動脈、上小脳動脈を分岐して中脳の高さで左右の後大脳動脈に分かれます。後大脳動脈は視床、大脳基底核に行く分枝や側脳室脈絡叢へ行く後脈絡叢動脈等を出して後頭葉底部・外側面や側頭葉の一部を潅流して後頭葉極に至ります。
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(2) |
臨床症状 |
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脳幹(中脳、橋,延髄)には脳神経のうち第V〜第XUの多数の脳神経核、神経線維が蜜に存在しているためこの部位の一過性の虚血の範囲、程度によって椎骨脳底動脈系の症状が様々な組み合わせで出現します。
椎骨脳底動脈系の一過性虚血による症状としては、回転性めまい、複視、構音障害、四肢の脱力、顔面のしびれ感などが出現します。めまいは最も頻度が高い症状で、首を回したり、過伸展したり、体位変換したときに起ります。
回転性めまいは脳幹背側部、とくに前庭神経核障害により生じ、その際に前庭神経核周辺にも障害が及ぶとそれに基づく種々の神経症状を合併します。例えば前庭神経核に隣接する三叉神経核にも障害が及びますと口の周囲のしびれ感が出ますし、前庭神経核の頭側にある外転神経核,動眼神経核が障害されますと複視が生じます。回転性めまいは突然出現して数分以内に消失することが多い。通常、めまいに上に述べた種々の症状が伴いますが椎骨脳底動脈循環不全の中にはめまい単独のみの例もあるとの報告がありますのでめまい発作のみの例でも椎骨脳底動脈循環不全を常に考えていなければなりません。
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(3) |
椎骨脳底動脈循環不全症のまとめ |
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脳を流れる椎骨動脈・脳底動脈の血流量が減少していおきます |
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めまいは回転性めまいが多くみられますが浮動性、眼前暗黒感の例もみられ、長くても数分間で消失します。高血圧症、高脂血症を有する方に多くみられます |
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めまいに伴って複視(ものが二重に見える)、構音障害(言葉ががしゃべりにくい)、意識障害(気が遠くなる感じがする)、感覚異常として口のまわりがしびれ、手足のしびれることがあります。
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