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Wallenberg症候群(延髄外側症候群): |
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延髄外側部は後下小脳動脈の分岐によって支配されると考えられていましたが椎骨動脈から直接延髄外側部を支配する分岐が出ている例が多いことが分かってきました。血管病変は椎骨動脈の閉塞で大部分は血栓性の閉塞によって発生します。
主要症状:回転性めまい、眼振、運動失調、嚥下障害、悪心・嘔吐、Horner徴候、歩行失調、軟口蓋・声帯麻痺などの症状がみられます。
原因:椎骨動脈の閉塞、椎骨動脈の解離等によると考えられています。
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2) |
脳幹出血: |
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高血圧性脳出血の約10%に起り、初期症状としてめまいを訴えますが急速に意識障害・昏睡、四肢麻痺に発展します。診断はCT撮影により、死亡率は約40%です。
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3) |
小脳出血: |
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高血圧性脳出血によることが多く、発生時の激しい嘔気・嘔吐、頭痛、回転性めまいで発生し、急速に脳ヘルニアを起こします。
四肢麻痺・運動麻痺がないにもかかわらず体幹失調のため起立、歩行が不可能になることが特徴である。意識障害が出現し進行する例では早期の血腫除去術を要する例もあり本症が疑われればCT撮影して診断を確定します。
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4) |
上小脳動脈梗塞: |
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上小脳動脈は脳底動脈の後大脳動脈分岐部付近部から分岐して脳幹部の一部と小脳半球の上面、小脳虫部の上半分を支配しています。
臨床症状: |
上小脳動脈の起始部で血栓性閉塞を示す大きな梗塞例ではめまい、頭痛、嘔吐を生じ、患側の小脳症状、ホルネル症候群、反対側の滑車神経麻痺、頚部以下の温痛覚障害を呈します。中程度の上小脳神経動脈領域の梗塞ではめまい、ふらつきがみられ、小脳症状として構音障害、上下肢の協同運動障害、歩行運動障害などを伴うことが多くみられ、軽度の梗塞例ではめまい、ふらつきのみを訴えます。
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5) |
前下小脳動脈梗塞: |
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前下小脳動脈は約80〜90%は脳底動脈から分岐します。
内耳動脈は多くは前下小脳動脈から分岐します。前下小脳動脈は橋下外側部、中小脳脚、小脳片葉、および内耳を支配しています。
臨床症状: |
内耳障害による患側の難聴・耳鳴、めまい。患側の顔面神経麻痺、顔面の温痛覚障害、ホルネル症候、小脳症状、反対側の頚部以下の半身の温痛覚障害等の症状がみられます。
本症はめまい、難聴、耳鳴で発症する例があり、これらの発生時の症状は末梢性疾患である突発性難聴、メニエール病として治療開始されます。その経過中に上述したような神経症状の出現で中枢性疾患が疑われます。可及的早期の鑑別診断には頭部CTでは病変の確認は難しくMRIの施行が不可欠な検査となっています。
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